作成日:2025/11/09
労働組合の世界@
― 現場を見つめ続けた人たちと、労働組合という「もう一つの社会」
社会保険労務士として仕事をしていると、「労働組合」と直接かかわる機会はあまり多くありません。
関わるとしても、会社の顧問として「合同労組から団体交渉の申し入れがあった」という相談を受け、対応の仕方を助言するような場面がほとんどです。
関わるとしても、会社の顧問として「合同労組から団体交渉の申し入れがあった」という相談を受け、対応の仕方を助言するような場面がほとんどです。
通常は、弁護士が交渉の中心を担い、社労士は会社側の労務・制度面の整理や記録作成、助言など、後方支援の役割を果たすことが多いです。
そのため、労働組合とのやり取りは、社労士にとって、慎重な対応が求められる特殊な場面といえるでしょう。
一方で、私自身はかつて企業内の労働組合から研修の依頼を受け、
若手社員向けに年金制度や退職金制度、マネープランの話をした経験がありました。
そのとき初めて、「企業の中にある労働組合」と「個人で加入できる労働組合」の世界がまったく違うことを実感したのです。
■Aさんとの出会い
趣味を通じて知り合ったAさんが、「長年、労働組合向けの雑誌社で働いていた」というので話を伺いました。
その雑誌は1962年に創刊、60年余にわたり発行され、令和6年3月に廃刊。発行元の会社も同時に清算されたそうです。
その雑誌は1962年に創刊、60年余にわたり発行され、令和6年3月に廃刊。発行元の会社も同時に清算されたそうです。
Aさんは1980年代末に入社し、バブル経済の熱気、その崩壊、そして“失われた30年”を雑誌作りの現場で見続けてきた方です。
雑誌は「労働組合の歴史そのものを記録してきた」と語りました。
雑誌は「労働組合の歴史そのものを記録してきた」と語りました。
今回はAさんのお話を元に数回にわたり「労働組合の世界」を見ていきます
■雑誌の読者と目的
雑誌の主な読者層は、大企業の労働組合から中小企業の労働組合まで、労働組合活動が活発な企業の組合幹部や組合員。
特に製造業系の業種別組合や中小企業の連合体が多く、大企業の下請け企業の労働組合などからも記事のネタが寄せられていたそうです。
特に製造業系の業種別組合や中小企業の連合体が多く、大企業の下請け企業の労働組合などからも記事のネタが寄せられていたそうです。
合同労組(個人加盟型の労働組合)も購読者として存在しましたが、数としてはやや少なかったといいます。
この雑誌の購買層は大企業の労働組合から合同労組までと幅広く、雑誌は、組合幹部をはじめ組合員の学習会のテキストとして、また情報交換や勉強のために活用されていたとのことです。
■雑誌のねらいと構成
「労働組合運動を側面から支援する」との目的を持ち、春闘は特に力が注がれました。この雑誌の大きな目的の一つは、春闘(しゅんとう)を支援することでした。
産業別組合が連携し、賃上げや労働条件の改善を進めるうえで、現場の情報共有や実態の分析は欠かせません。
産業別組合が連携し、賃上げや労働条件の改善を進めるうえで、現場の情報共有や実態の分析は欠かせません。
また、中小企業の労働組合が賃上げを実現するには、大企業の利益配分の適正化が必要だという視点を持っていました。
下請け構造の中で、大企業の価格引き下げ圧力が中小企業の賃金抑制につながる。
この構造的な課題を社会に訴えることも、雑誌の大切な役割でした。
●毎号ごとのテーマ
雑誌の誌面は毎号大きなテーマがあり、
・春闘特集(賃上げ率や交渉状況の分析)
・労働時間、有給休暇取得率などのデータ分析
・労働組合委員長や研究者との座談会
・労働基準法の改正や解説記事
・労組組織化問題
・春闘特集(賃上げ率や交渉状況の分析)
・労働時間、有給休暇取得率などのデータ分析
・労働組合委員長や研究者との座談会
・労働基準法の改正や解説記事
・労組組織化問題
など、非常に幅広い内容を扱っていたそうです。
■編集者の視点
Aさんは、記者がどういう風に記事を取材し書いていたのかを語ってくれました。
「組合を訪ね回り、職場で起きている問題、それらをどのように解決したのか等、を直接聴く」
「記事は現場の声から生まれます。デスクで書くのではなく、現場で見て、聞いて、感じたことを伝えるのが使命でした」
これらの言葉は大変印象に残りました。
これらの言葉は大変印象に残りました。
労働組合と企業の関係を客観的に追いながらも、そこに生きる“人の声”を伝えることを何より大切にしていたのです。
■次回予告
次回は、Aさんが語ってくれた「雑誌の踏み込んだ報道姿勢」や「労働問題を超えた社会的テーマ」をご紹介します。
働く現場のリアルから見える社会の変化を、もう少し深く掘り下げていきます。













