今さら聞けないシリーズー実務のリアル
今さら聞けないシリーズー実務のリアル
作成日:2025/11/23
労働組合の世界A



― 働く人と社会をつなぐ「現場からのまなざし」
前回の記事では、労組に寄り添って、労働組合向けの雑誌づくりの職場に長年身を置いた編集を通じて、現場で起こる問題を記録し、Aさんの話を紹介しました。

今回は、その誌面から見えてきた「労働組合のもう一つの役割」についてご紹介します。
 
■現場を伝える報道姿勢
Aさんが編集にたずさわっていた雑誌には、労働法等の制度解説だけでなく、企業内部の問題を率直に伝える記事が数多くありました。

たとえば、ある飲食チェーンの労働組合代表が「長時間労働の実態」を語り、それがのちに裁判へ発展したケースもありました。
多くの記事で、企業名を伏せずに掲載するなど、かなり踏み込んだ報道姿勢がみられます。この姿勢が信頼を生み、読者の間でも「現場の声を拾う雑誌」として支持を集めていました。
 
■労働の枠を越えたテーマ
印象的だったのは、誌面の中で「水の問題」が取り上げられていたことです。

水は生活と命に関わる公共の資源です。
しかし、ここ数年一部自治体では上下水道の一括委託や民営化が進み、労働組合内部からも「水の安全が守られるのか」といった懸念があがっていました。

Aさんはこう言います。
「労働の問題だけでなく、人が生きていく上で必要な“公”のあり方を問うことが、労働運動のもう一つの使命なんです。」
雑誌では、環境・医療・福祉・公共政策など、社会全体に関わるテーマも積極的に取り上げていました。
働く人を支えることは、結局は社会を支えることでもある――そうした思想が根底にあったのだと思います。


■変わりゆく労働組合の姿
今、その形態にかかわらず日本の労働組合の状況は大きく変化しています。
大企業の元組合員の方に話を伺ったところ、
「完全な労使対立は少なく、春闘は年に一度の山場。最終的には“落としどころ”を探るのが通例」とのことでした。
ただし、以前のように正社員全員が組合員という時代ではなく、
現在は有期・パート・アルバイトなど、多様な雇用形態の中で一体感が薄れているのが現実です。
かつての“全員加入”から、“個々が選ぶ”時代へ。
労働組合の存在意義も、静かにその形を変えつつあります。


■次回予告
次回は、Aさんがかつて関わった「合同労組」というもう一つの労働組合の形についてご紹介します。
会社が倒産しても、理不尽な扱いを受けても――それでも「誰かが支えてくれた」という労働組合のもう一つの側面を見ていきます。