今さら聞けないシリーズー実務のリアル
今さら聞けないシリーズー実務のリアル
作成日:2026/04/05
雇用保険における「解雇」とは



今回の疑問のきっかけは

ある知人の話からでした。
退職して送られてきた雇用保険の書類を見ると離職理由が「重責解雇」となっており、本人はこの「重責解雇」という理由に納得がいかず、ハローワークに異議申し立てを行い修正がなされたという事でした。

雇用保険における「解雇」と「重責解雇」手続きと給付の違い

雇用保険の実務において、「解雇」という言葉は一つではありません。
同じ解雇であっても、その内容によって給付の扱いも手続きも大きく変わります。

特に重要なのが
・通常の解雇
・重責解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇)
の区別です。離職票2「離職証明書」の右半分離職理由を記載する箇所となり1から5(2)までの理由がありその中から離職理由を選択します。


解雇に関係をしてくる部分は

4 事業主からの働きかけによるもの

  1. 解雇(重責解雇を除く。)
  2. 重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)とあります。
  3. 希望退職の募集または退職勧奨

今回はこの(1)と(2)の違い-意味、手続き内容、給付とその他付随する事項について確認していきます。

【1】まず2つの違いを見ていきます


@ 通常の解雇とは何か
通常の解雇とは、労働者の責めに帰すべき重大な理由によらない解雇を指します。
例:整理解雇、能力不足による解雇など

A 通常の解雇の手続き
離職証明書に「解雇」「会社都合による」等と記載するのみで、添付書類として「解雇通知書」を添付する場合もありますが特別な添付書類は通常不要です。

B 通常の解雇の給付
特定受給資格者となり、給付制限なし・給付日数も多くなります。

C 重責解雇とは何か
自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を指し、例として横領、重大な規律違反などが挙げられます。

D 重責解雇の手続き
解雇の場合と大きく異なります。
以下の資料が求められます。
(1)
就業規則(該当条文) 懲戒解雇等が記載されている条文
(2)
本人の認識を示す書類 これは本人がその責任を認めたと署名している書類-本人が認めていない場合はハローワークで異議申し立てを行う可能性が大いにあります。
(3)
解雇の経緯資料    懲罰委員会などの議事録等-社内で適切な手順により、懲戒解雇に至ったとの証拠

E 重責解雇の給付
給付制限あり、給付日数も制限されます。
要するに、解雇の場合は労働者・会社いずれの理由にかかわらず、すぐに給付され、給付日数を多くなりますが、「重責解雇」の場合は

F 最も重要なポイント
最終判断はハローワークが行います。

G まとめ
解雇と重責解雇では、手続きも給付も大きく異なります。

懲戒解雇との違い
ここでもう一つの解雇「懲戒解雇」との違いをみましょう。

懲戒解雇:会社の就業規則に基づく処分 

重責解雇(雇用保険):ハローワークが判断する離職理由 

たとえ会社が懲戒解雇とした場合でも、必ずしも重責解雇と認定されるわけではありません。逆に言えば、会社が「重責解雇」として離職票に記載しても、そのまま認められるとは限らず、最終判断はハローワークが行います。


重責解雇- 必ずしも「解雇予告の除外認定」は必要ない

ここでもう一つ「重責解雇」は「解雇予告の除外認定」を受けていないと手続きできない、との誤解があります。※解雇予告の除外認定は別途次回の説明となります。

これも異なります。重責解雇は「解雇予告の除外認定」を受けていなくても、ハローワークが求める手続きが適切に行われている場合は認められるケースがあります。

もちろん労働者に重大な責任があることの「除外認定」があれば「重責解雇」がみとめられますが、必ずしもその必要はありません。そのためにD重責解雇の手続きにおいて

・本人の認識を示す書類 ・解雇の経緯資料 を要求しています。
 


雇用保険 解雇の流れ まとめ

@普通解雇 A重責解雇 B解雇予告の除外認定を受けた「重責解雇」

以上の3つのやり方が出てきます。

会社のジレンマ

実務の現場では、会社側から次のような声を聞くことがあります。

「労働者に問題があって退職してもらったのに、どうしてすぐに失業給付が出て、しかも給付日数も多いのか」

確かに会社としては、指導を重ねた末の解雇であったり、業務上の問題行動があった結果としての退職であった場合、そのように感じるのも無理はありません。

しかし、雇用保険制度は、あくまで「労働者の生活の安定」を目的として設計されています。そのため、解雇である以上、原則としては労働者に対する保護が優先され、「重責解雇」と認められるような明確な事情がない限りは、特定受給資格者として扱われることになります。

ここで重要なのは、会社側の認識と、雇用保険制度上の判断は必ずしも一致しないという点です。会社としては「問題があった」と考えていても、それが「自己の責めに帰すべき重大な理由」に該当するかどうかは、ハローワークが客観的な資料に基づいて判断します。

そのため、

  • 単なる能力不足 
  • 業務上のミス 
  • 指導を受けても改善しなかった 

といった事情だけでは、「重責解雇」とは判断されないことが多いのが実情です。

結果として、会社としては納得しにくい場面が生じますが、これは制度上、

👉「労働者保護を優先する仕組み」であることによるものです。

この点を理解しておかないと、離職票の記載や説明の場面で認識のズレが生じやすくなります。実務上は、会社の判断と制度の考え方が異なることを前提に、適切に整理していくことが重要といえるでしょう。