作成日:2026/05/03
「重責解雇」はどこまで認められるのか
―行政資料と実務から見る判断のポイント―
前回は、「重責解雇」という言葉が法律用語ではなく、雇用保険の行政実務で用いられる概念であることを整理しました。
本稿では、行政資料および実務の観点から、「どこまでが重責解雇に該当し得るのか」を整理します。
■ 1 判断主体はハローワーク
まず重要なのは、「重責解雇」に該当するかどうかは会社が決めるものではないという点です。
離職理由は、事業主と労働者双方の主張および証拠書類を確認したうえで、ハローワークが判断します。
■ 2 行政資料に示される類型
行政資料では、重責解雇に該当し得る類型として以下が示されています。
・刑法違反
・故意または重過失による設備・器具の破壊
・事業所の信用失墜
・就業規則違反等
ただし、これらはあくまで「類型」であり、該当する事情があるだけで直ちに重責解雇と判断されるものではありません。
■ 3 重要なのは「重大性」と「証拠」
重責解雇として認められるためには、次の点が重要になります。
・単なる過失ではなく故意またはそれに近い重過失であること
・会社に実害または重大な影響が生じていること
・本人の認識や証拠が存在すること
例えば、設備破壊の場合でも、単なる操作ミスではなく、怒りに任せた破壊行為など、明確に区別される必要があります。
■ 4 判断が分かれやすい類型
特に以下の3点は、実務上判断が分かれやすい領域です。
・故意・重過失による破壊
・会社の信用失墜
・重大な就業規則違反
これらについては、行政資料上も一律の基準は示されておらず、以下のような要素を踏まえて個別に判断されます。
・違反行為の内容と影響の大きさ
・過去の指導歴や警告の有無
・客観的証拠の有無
したがって、「該当する可能性がある類型」ではあっても、直ちに重責解雇と断定することはできません。
■ 5 重責とならない例
行政資料では、以下のような事情は重責解雇とは区別されています。
・能力不足や成績不振
・体調不良や私傷病
・妊娠、出産、育児、介護等の個人的事情
これらは「通常の解雇」または「個人的事情による離職」として扱われます。
■ 6 実務上のポイント
最も重要なのは、処分の名称ではなく「事実と証拠」です。
・懲戒解雇=重責解雇ではない
・会社が重責と判断してもそのまま通るとは限らない
最終的には、ハローワークが資料に基づき客観的に判断します。
■ 7 まとめ
行政資料上、重責解雇に該当し得る類型は示されていますが、
・故意・重過失による破壊
・会社の信用失墜
・重大な就業規則違反
については、いずれも「程度」と「証拠」の検証が不可欠です。
したがって、実務では「該当する可能性がある類型」=「重責解雇」
と単純に結びつけるのではなく、行政資料に基づき個別事情を精査することが重要です。
■ 出典(行政資料)
・雇用保険法、雇用保険法施行規則
・厚生労働省「離職理由の判定に関するQ&A」
・厚生労働省「離職票の記載方法」
・ハローワーク配布資料「離職理由の各項目の内容」
・ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」













