今さら聞けないシリーズー実務のリアル
今さら聞けないシリーズー実務のリアル
作成日:2026/10/12
第3回 病気休職制度はそのままで大丈夫? 〜有期契約社員を一律に対象外としていませんか〜



令和8年10月1日から適用される改正同一労働同一賃金ガイドラインでは、「病気休職」に関する考え方が新たに追加されました。
この改正を受け、「有期契約社員にも正社員と同じ病気休職制度を設けなければならないのでしょうか。」という質問を受けることがあります。
しかし、このような理解は少し正確ではありません。
今回の改正で厚生労働省が示したのは、「すべての有期契約社員に正社員と同じ病気休職制度を設けなさい」という考え方ではありません。
会社がまず行うべきことは、現在の病気休職制度について、正社員との待遇差が均等・均衡待遇の考え方に照らして適切かどうかを確認することです。
つまり、「制度を作るかどうか」が問題なのではなく、「現在の制度が適切なのか」を検証することが今回の改正の出発点になります。


ガイドラインは「説明」ではなく「均等・均衡待遇」を求めています
実務では、「正社員だけを対象としている理由を説明できればよい」と考えられることがあります。
しかし、パートタイム・有期雇用労働法が求めているのは、単なる説明ではありません。
同法第8条では、基本給や賞与だけでなく、福利厚生や病気休職などを含め、それぞれの待遇について、その性質や目的に照らし、職務内容、責任の程度、配置変更の範囲などを考慮し、不合理な待遇差を設けてはならないとしています。
また、職務内容と配置変更の範囲が正社員と同一である場合には、第9条の均等待遇の考え方が適用され、有期契約であることだけを理由として異なる取扱いをすることはできません。
つまり、会社が行うべきことは、「説明できるかどうか」を考える前に、「正社員との比較を行い、均等・均衡待遇となっているか」を検討することです。



会社は何を比較しなければならないのか
病気休職制度を検討する場合には、まず正社員の制度を整理する必要があります。
例えば、病気休職制度は何を目的として設けられているのか、休職期間は何か月なのか、休職中の給与保障はあるのか、復職はどのような基準で判断するのか、といった制度の全体像を確認します。
そのうえで、有期契約社員について、次の事項を比較・検討します。
  • 正社員と職務内容が同じか。 
  • 責任の程度に違いがあるか。 
  • 配置転換や職務変更の範囲は同じか。 
  • 契約更新の実態はどうなっているか。 
  • 制度の目的は有期契約社員にも当てはまるか。 
これらを比較した結果、正社員だけに病気休職制度を設け、有期契約社員を一律に対象外とすることが制度の目的に照らして合理的であるのかを検討することになります。



「一律に対象外」は、そのままでよいのでしょうか
現在でも、多くの会社では、有期契約社員就業規則に「病気休職制度は適用しない」と規定しています。
しかし、改正後のガイドラインでは、有期雇用労働者についても「労働契約が終了するまでの期間を踏まえて病気休職の取得を認める」ことが示されています。
つまり、有期契約であることだけを理由として、すべての社員を制度の対象外とする運用については、ガイドラインとの整合性を改めて確認する必要があります。
もちろん、すべての有期契約社員に正社員と同じ内容を適用しなければならないわけではありません。
しかし、「有期契約だから対象外」という結論だけで終わらせるのではなく、正社員との比較を行い、その待遇差が均等・均衡待遇の考え方に照らして適切かを検討することが求められています。


今回の改正で会社が最初に行うべきこと
今回の改正は、就業規則を直ちに書き換えることから始まるものではありません。
まずは、自社の病気休職制度の目的を整理し、その制度が誰を対象としているのかを確認します。
次に、有期契約社員の働き方や契約更新の実態を把握し、正社員との比較を行います。
そして、その結果として、均等・均衡待遇の考え方に照らし、現在の制度が適切であるか、あるいは見直しが必要なのかを検討することになります。
制度を変更するかどうかは、その検討結果を踏まえて判断すべき問題であり、「有期契約だから対象外」という従来の考え方だけでは足りない時代になったといえるでしょう。

 


次回予告

では、実際に制度を見直すことになった場合、会社はどのような点を検討すればよいのでしょうか。次回は実例を見ながらもう少し掘り下げていきます。

では、実際に制度を見直すことになった場合、会社はどのような点を検討すればよいのでしょうか。次回は実例を見ながらもう少し掘り下げていきます。