今回のテーマは 「賃金台帳の備え付け」 についてです。
先日、ある会社が労働基準監督署の調査を受けた際、賃金台帳をどのように準備すればよいか分からず、当日の対応にとても苦労したという話を耳にしました。
皆さんの会社では、調査が急に入ったときに賃金台帳をスムーズに出せる状態になっていますか?近年は給与計算システムや便利なアプリを導入する企業が増えていますが、いざというときに「正しい形式で出力・保管できるか」は、非常に大切な課題です。
法律上の位置づけと記載義務
賃金台帳の備え付けは、労働基準法第108条に規定されており、さらに平成7年3月10日付通達(基収94号)で具体的に整理されています。大きなポイントは次の2つです。
- 各事業場ごとに、賃金台帳を画面に表示し、必要に応じて印字できる仕組みを備えること。
- 労働基準監督官の調査時には、直ちに内容を確認でき、写しを提出できる体制にあること。
このため、システムにデータを保存しているだけでは不十分で、必要なときに「事業場単位」で賃金台帳を出力できるようにしておくことが重要です。
事業場ごとの備え付け
給与計算を本社でまとめて処理している企業でも、工場や支店に管理責任者が配置されている場合、その単位が「事業場」とされます。調査時に「賃金台帳は本社で保管しています」と答えると、是正指導を受ける可能性があります。
つまり、本社にだけ置けばよいのではなく、各事業場でも必要に応じて出力・提示できるように準備しておくことが求められるのです。
📌 チェックリスト:失敗例と改善ポイント
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✔ 自社は大丈夫?確認してみましょう
- 事業場単位での印刷対応
調査時に「本社でしか印刷できない」と答えて是正指導を受けた事例あり。
👉 改善:工場や支店でも出力可能な体制を整備し、マニュアルを準備しておく。 - 法定記載事項の不足なし
賃金台帳に「出勤日数」や「時間外労働時間」が抜けていた事例あり。
👉 改善:労基法施行規則第54条の必須項目(氏名・労働日数・時間外労働等)を再確認。 - 過去分の即時出力が可能
「過去3年分を提示してください」と言われたが出力できず、対応に苦慮した事例あり。
👉 改善:保存期間(原則5年)を踏まえ、定期的にテスト印刷を実施。
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情報管理の注意点
賃金台帳には給与に関する機微情報が含まれるため、保管場所や取り扱いは慎重に考える必要があります。
一方で、調査に備えて「いつでも出せる状態」にしておくことも同じくらい大事です。印刷して常備するのではなく、必要に応じて即座に出力できるかどうかを確認しておきましょう。
突然の調査に備えて
労働基準監督署の調査は、予告なく実施されることがあります。突然の場面で慌てないようにするためにも、給与計算システムから正しく賃金台帳を出力できるか、一度試しておくことをおすすめします。
皆さんの会社でも、この機会にぜひ準備状況を点検してみてください。日頃から確認しておけば、いざというときに落ち着いて対応できます。













