👉 [第一弾の記事はこちら]
前回の記事では、養育特例について十分な説明がなされなかった結果、
「制度を知らなかったために申出できず損をした」と労働者から会社へ苦情が寄せられたケースをご紹介しました。
制度の周知不足は単なる事務ミスにとどまらず、従業員との信頼関係を損ね、後々のトラブルにつながることがあります。
今回も、有志の情報交換の場で実際に共有された、養育特例に関する実務の事例をご紹介します。
⚠️ 男女ともに必要な配慮
養育特例は、女性・男性を問わず適用される制度です。
- 女性の場合、育児休業から復職するとほとんどの方が養育特例の申出を行います。
- 一方で男性育児休業者の場合、短時間勤務を選ぶ方が少ないため、対象になり得る場面を見過ごしやすく、制度説明が漏れるリスクがあります。
近年は男性育児休業者も増えてきました。
そのため実務上は、復職後に必ず「養育特例の申出をされるかどうか」を確認することが重要です。
また、転職時の対応も女性・男性を問わず同様に行う必要があります。
❓ 転職者の場合の案内
養育特例のもう一つの特徴は、「事業所ごとに手続きを行う必要がある」という点です。
つまり、同じ養育期間であっても、複数の会社に勤務していた場合には、それぞれの会社ごとに申出をしなければなりません。
実際に、転職する従業員には次のように案内しました。
📩 案内文例
〇〇様
ご転職に際して、以下の点にご留意ください。
「養育特例のお手続き」は事業所ごとに行う必要があります。
そのため特例の申出をご希望される場合は、転職先の人事部などの窓口にご相談いただき、手続きを進めていただきますようお願いいたします。
【重要】会社ごとで手続きが必要(日本年金機構より引用)
養育特例の措置の適用を受けようとする期間において勤務していた事業所等が複数ある場合、それぞれの事業所の被保険者期間ごとに、申出書を提出してください。
出典:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置|日本年金機構
⚖️ 申出は本人の意思で決まる
同じ会社で、同時期に2名の該当者が出たこともありました。
意向を確認したところ――
- 1名は申出を希望
- もう1名は申出を希望せず
という結果に。
この事例からも分かるように、養育特例は 会社が自動的に行う制度ではなく、あくまで本人の判断に基づく制度です。
会社としては、対象者全員に制度を案内し、申出の有無を本人に委ねることが求められます。
まとめ
養育特例は「申出制」であり、さらに「事業所ごとに申出が必要」という特徴を持っています。
- 男女を問わず、復職後には必ず説明・確認を行うこと
- 転職者には転職先で再度の申出が必要であることを案内すること
- 複数の対象者が出ても、申出を行うかどうかは個人の意思であること
こうしたポイントを押さえることで、制度の利用漏れやトラブルを防ぐことができます。
有志の情報交換の場では、このような実務の細部に光を当て、教科書には載らない実務のリアルを共有し続けています。