前回(第一弾)では、外国人従業員を多く雇用している企業が「寮生活での騒音や生活習慣の違い」から近隣住民とのトラブルを抱え、 「外国人専用の規程を作ることは差別にならないか?」という相談を取り上げました。
そこから議論が広がり、今回の第二弾では、この分野に長年関わってこられた専門家の意見をもとにさらに深堀りしていきます。
前回の記事はこちら
👤この問題に詳しい先生との出会い
今回お話を伺えたのは、外国人労働者の現場に精通した社会保険労務士の先生。
なんと日本語教師の資格を取得して、外国人労働者に直接日本語を教えてこられた経験を持つほど熱心な方です。
1993年に「外国人技能実習制度」が創設されて以来、こうした会社の変遷を現場で見続け、制度と実務の両面に精通されています。
🏢管理団体の役割と“盲点”
先生によると、現在では マナーや生活習慣の指導は「管理団体」の役割とされています。 技能実習生として来日する外国人労働者に対しては、受け入れ企業ではなく、管理団体等が生活指導や地域との調整を担うことになっています。
しかし実務上は――
- 会社側が「管理団体がどこまで行うのか」を把握していない
- 管理団体等の側も役割を十分に果たしていない場合がある
といった“盲点”が存在していました。 結果として、企業が不要な負担を抱え込んだり、逆に必要な支援を受けられなかったりする事例が少なくありません。
◆参考までに管理団体の役割や主な業務は大きく以下の6つです。
@ 監査業務
A 訪問指導
B 入国後の講習の実施
C 技能実習計画の作成指導
D 外国の送り出し機関との契約、求人・求職の取次
E 技能実習生の保護・支援
💡社労士としての実務対応
こうした現場でベテランの先生が行ったことは――
- 就業規則は全従業員に適用
- 外国人専用の規程を作るのではなく、あくまで「全員共通のルール」として就業規則を整備。
- 外国人向けに“ひらがな”で作成
- 日本語検定試験でN3(日常会話レベル)に合格している実習生が多く対象であることを踏まえ、専門用語や漢字が多い就業規則では理解できない可能性があるため、 できる限り“ひらがな”を用いた、わかりやすい就業規則を別途用意。
- 管理団体の役割とのすみ分けを整理
- マナーや生活習慣の教育 → 管理団体の責任
- 労働条件・就業ルールの整備と適用 → 企業と社労士の役割
- この線引きを明確にすることで、双方の責任が曖昧になるのを防ぎました。
まとめ
第一弾で取り上げた「外国人専用規程を作るべきか」という悩みの背景には、 管理団体の役割を正しく理解していない“落とし穴” がありました。
- マナーや生活習慣の指導は管理団体の仕事
- 就業規則は全従業員に共通で適用
- 外国人従業員に理解してもらえる工夫(ひらがな表記など)をするのが実務対応
こうした整理を行うことで、企業は無用なリスクを避けつつ、外国人従業員が安心して働ける環境づくりが可能になります。













